2007年06月25日

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2007年04月20日

白峰大神/白蛇抄第3話/弐

白銅はうち捨てられた細かな紙片を拾うと、ふうと吹いた。
一片の紙から、小さな式神が現れた。
「はっ」
片膝を付き、白銅の前に額づく式神である。
「白峰の所へ行けるか?」
「・・・・・」
「お前の思うておる通り、くじり殺されようの。行けるか?」
「行ってみれば、帰らぬとも、良うございますか?
それで、白銅様の気が晴れますか?」
「・・・・・・」
「行って参ります」
ふっと、姿が消えたが、それから、やはり式神は帰って来なかった。
式神を飛ばした所で、甲斐はない。
只、ひょっとしてその式神をひのえが見るやも知れぬ。
式神を見たひのえがそれが白銅の物だと言う事は判る。
ひのえが白銅の事を一かけらでも思い起こしてくれれば良い。
それだけの白銅であった。
七日目の夜にひのえは小さな喘ぎを迎えた。
「言った通りであろう?良いだろう?どうじゃ?
ひのえ。わしの物がもっと欲しかろう?」
たぶさねを、大きく膨らますと、白峰が激しく動き出した。
「あああああああ・・・・ああ、ああ・・・・・」
ひのえの身体がとうとう白峰のくじりに喘ぎ始めた。
「あ、あ、あ」
「良いと言うてみい。良いだろうが、言うてみい」
「ああ。ああ。もっと、ずっと、欲しゅうございます。朝まで離しますまいな」
「もとよりよ。ひのえ。ひのえ。八代の身。愛おしいのう」
「ああ・・・・其は・・・い・か・なる・・こ・・と?」
白峰のくじりに抗う事も叶わぬまま、
尋ねた言葉に白峰が優しく答えた。
「八代の事か?」
「ああ・・ああ・・はい・・・」
ほたえ狂うひのえを眺めやりながら、
白峰はなおも腰を突き動かした。
「ひのえ。前世から数えて、その身で八代。
七日七夜のまぐわいを七度重ねたひのえの八代を百日百夜。
貰い受けると願を懸けたのじゃ」
「あああ・・・・あ、おおおうう」
「良いか?お前の身体が七日七夜、七世の縁を、因を結んだのを覚えておるのじゃ。
千年の昔から、お前はわしだけの物じゃ。
其れ。そうだとお前のほとが答えておろう?」
うねるような快い波がひのえのほとの中に現れると、
ひのえのほとが小刻みに震えだした。
「おおおおう・・・・」
ひのえがあくめを迎え出すと、
白峰が振り絞るような声を上げてひのえのなかに精をはきだした。
「ひ、ひ、ひのえ・・ひのえ、ひのえ」
猛り狂う白峰の物が、七日目はこれでやっと静まったのである。


十五日目の朝。
ひのえは障りを向えた。
「とまらなんだか」
白峰はそう言ったがそのまま、ひのえを引寄せると、
またしても、裾を捲り上げてゆく。
ぎょっとした目でひのえは白峰をみた。
「何を?」
「きまっておろう」
障りのまっ只中でさえ、白峰はひのえを求めた。
「良いわ。湯殿へ行こう」
ひのえを抱きかかえると白峰は湯殿に向かった。
「来や」
ひのえの中に入れこむと
「抜けぬまで血は落ちぬゆえ、気にする事はない」
そう言うと、いつものように白峰の物が蠢き出した。
十五日。何処にここまでの精があるのかと思うほど
白峰の交接が無い日は無かった。
白峰が一度ひのえの中に入りこむと、
早くても、一刻、時に昼夜に及ぶ事も、すでに何度かあった。
恐ろしく、長い快感を与えられた後は
その名残が芯に残り、ひのえのほとが渇く暇さえなかった。


三十日の夕刻。
白峰の手が指がひのえのほとを揉み込み、
何度も白く細い指がひのえの中に踊り込んだ。
「ああ・・・」
身体の中がほたえ、ほとの芯まで熱っぽく感じ、
白峰の指がひどく快い。
ほとの中で二本の指を開いたり窄ませたりしながら白峰が
「ひのえ。よう、滑っておるわ」
言うと、その指を引きぬいてひのえに見せた。
軽く広げた指に絡むような精汁が粘っこく糸を引いており、
透けるような透明な蜘蛛の糸の様であった。
「いや」
想わず目を伏せるひのえに白峰が覆い被さってゆく。
「ひのえ。このような時は欲情も激しいが、子も宿る」
身体ごと激しく揺さ振られながら
この日、ひのえはひどく乱れ、何度もあくめを迎えた。
白峰がひのえを離した時、ひのえの中からとろとろと熱く、
大量の精汁が零れ落ちた。
「ひのえ。女になったの」
白峰の囁きにひのえは白峰の胸に顔を埋めた。

四十五日
「ひのえ・・・来ぬの・・・」
障りが、である。
「あ・・」
「まだ、判らぬがの・・・」
白峰の顔が綻ぶ。ぐうっと両の乳を、揉みしだきながら、
「心持ち、張って来ておるのか」
「わか・・り・・・」
摘み上げられた物に湧きあがった感覚に、
ひのえは思わず、しゃがみ込んだ。
其れだけで、自分のほとの中にも疼くような渋りが込み上げて来る。
「どうした?もう、潤むか?」
「あ・・いえ」
「嘘を申すな」
ひのえの足を引寄せると、そのまま、白峰は裾を割り、
ほとに向けて舌を這わせていった。
ぬるりと溢れるものを啜る様に舐め上げると、
白峰の舌がほとに差し込まれた。
温かく柔らかい、舌の小さな蠢きにさえひのえの声が漏れた。
ひのえをしばらく快楽の波のなかに泳がせていた白峰であった。
「そろそろ、欲しかろう?入れてやるわ」
しとど、濡れそぼった物が喘ぐ様に
白峰の実を呑み込んで行く様を見ながらひのえの声を聞いた。
切ながる、その声に白峰の物が益々、張りつめてゆく。
「よう、覚えたの」
ひのえの身体が白峰の寵愛に、呼応するようになってくると、
白峰がひのえを少しでも長く喘がせようとする。
果てそうになると白峰もじっと、
動きを止めてあくめを遣り過ごすのである。
が、動かぬ物にまでひのえの肉が追い縋るかのように
ひくひくと動き、僅かの蠢きにひのえが声を上げた。
「これだけでも、良いか?この方がもっと・・・良かろう」
あくめが沈み込むと白峰が再び、ひのえの中に躍動を繰返した。



五十三夜
「白峰・・かように人の姿になりても、・・なぜ?」
白峰が人の姿になりても、その陽根だけは蛇の物であった。
ひのえはそれを聞いているのである。
「人の物が良かったか?ひのえ。こは、ひのえだけに与うる物。
故にこの容。ひのえをたぎらす物を人の物にせぬばならぬか?」
「あ、いえ。ひのえは人の物など、見た事も、ましてや、触れた事も・・・」
「判っておるわ。」
白峰自身が破瓜を与えたのである。
自明の事である。
「蛇神の姿にならぬのはの、こうできぬゆえ・・・・」
ひのえのほとを刺し貫いた物を動かしながら、
白峰の指がひのえの陰核を弄った。
「ああ・・ああ・・・許しおれ・・・」
ひのえのほとの中に大きな波が押寄せてくるのを、
白峰の物がさらに蠢く。
激しい陰核への刺激が
そのまま、ほとの中の白峰の物の動きと呼応すると、
ひのえがあっさり、あくめを迎えてしまった。
「ああ・・・・・・ああ・・しら・・・み・・ね・・よ・・い」

五十四夜
白峰がくすりと笑った。
「ひのえ。」
「はい」
「昨日、人の物を触った事が無いと言うておったの?」
「あ、はい?」
何を言い出すのかと訝しげなひのえの返事である。
「が、鬼の物には、触れたの?よう、掴んだの?」
「あっ、ああ。そうでありましたな。が、よう知っておいでである」
「お前の成す事は、全て見ておった。危なげな事を平気でしおる。
が、時折、よう判らぬ事をする」
「判らぬ事?」
白峰がひのえを抱きこみながら答えた。
「おお。そうじゃの、例えば、なんで悪童丸の舌をしゃいた?
悪童丸の韻なぞ、お前なら跳ね帰せように?」
「ああ。舌に情念が逃げ込みます故」
「知っておるか。ふむ。下の物に情念を詰め込んで
勢を孕ませてやろうとその折に決めよったか?」
「それもありました。が、情念が舌に逃げこめば
陽の物を断ち切られては悪童丸がほたえ苦しみましょう?」
「ほっ。優しいものよのう」
白峰の手がひのえの襟を割ると
浚え出したひのえの両の乳房を揉みしだき始めている。
「あっ」
ひのえの身体に貫かれた快さに思わず声が漏れる。
「情念が舌にも入り込む。故に、ひのえ。
男はあまやかな言葉を惚れた女子に言わずにおけぬ。
のう、ひのえ。愛おしい・・・・」
身体の芯に火が付いてゆくような甘言を
ひのえの耳に何度も何度も囁かれながら
次には白峰の物でひのえが目くるめくような快感の高みに
押し上げられて行くのは判っていた。


                                     

「また、やっておるのか?」
白銅の元を訪れた不知火が目にした様をそう言った。
「どうせ帰って来ぬわ」
式神を飛ばす事である。
同じ様に白峰の元からひのえも帰って来ぬかも知れぬ。
「判っておろうに」
「どうしろというのだ。何をしろというのだ。
こうしている間も白峰がひのえの身体をくじり、
心まで我が物にしようとしているというのに
わしは何も出来ずにここに居る」
「・・・・・」
肩が震え、上がってくる慟哭を抑えようとする白銅の顔が
歪むのを不知火は只、黙って見ているしかなかった。


六十六夜。
つと、白峰が睨み付けるだけでたちどころに式神の姿が消え去って行く。
「ひのえ。白銅がまた、飛ばしてきよるわ」
「・・・・・」
すでに白峰の寵愛の初めの手が乳に延び
微かな喘ぎに酔わされていたひのえであった。
「口吸いなぞ、許しやるから、白銅め。ほたえあがってしもうたのだ」
ひどく嫉妬の絡んだ目でひのえを見る白峰だった。
「何故、許した?」
「・・・・」
「余りに思うゆえか?」
「かもしれませぬ」
「ひのえ、わしも同じか?」
ねめつけるように見ていたかと思うた白峰が
ひのえの手を取ると、白峰の実を握らせた。
「苦しゅうほど妬けるわ。ひのえをいくら喘がせても、
などかわしの物にならぬのか?」
ひのえの目の奥を覗き込むと
「白銅。見ておるがよい」
白峰が言うと、散らした筈の式神が
何時の間にか壁を背にしてちょこなんと座っていた。
足をくの字に曲げ膝を抱かえ、虚ろな目で白峰を見ていた。
「よう、見やれ。その様。白銅にように伝えおれ」
言うと、ひのえの顔を寄せつけその口を啜った。
白峰の舌が離れるとそのまま項を舐め上げる。
さらに両の手でひのえの乳を引き絞るように掴むと
その先に舌を落とし込んでゆく。
「ああ・・」
ひのえの声が上がるのを待って
白峰は帯を緩ませ着物をはぐった。
床に敷布の様に広がる着物の上で白峰はひのえを抱いた。
嫉妬の炎が更に欲情の焔を煽り大きな炎が白峰を包んだ。
瞬きもせず呆けた顔で二人の様を見ている式神がいる。
ひのえは敷かれた物をはぐる様にして身を包もうとするが
白峰がそれを取り払うとひのえのほとに顔を寄せた。
「あっ、いや・・・・」
が、それも、すぐ細かな喘ぎに変る。
「あ、あ、あ・・・・」
細かく震える声が白峰のいたぶりの様を表わしている。
「見ておれ。ひのえは、わしの物じゃ」
小さな式神にまで、猛り狂わねばならぬ白峰の心の様が
ひのえの胸に刺さった。
『白峰・・・すまぬ』
白峰の身体が延びあがり
ひのえの身体の上に上がってくると、
ひのえの中に己の物を入れ込むとゆっくり動かし始めた。

「ほっ?帰ってきおった」
初めて白峰に気付かれなかった様である。
小さな式神が白銅の前に姿を現したのである。
「澄明は、どうであった」
気になる事である。
日毎夜毎。哀しく憂いた顔をして
百日を過ぐるのを待っているのであろう。
病にならぬか、それも気懸りであった。
「あ、はっ・・」
もどかしげに返事を待つ白銅であった。
「元気であらせられました」
「そうか、やつれてはおらなんだか?」
「はい」
「よう、白峰に気が付かれなんだの」
苦労をねぎろうてやるつもりであった。
「あ、や、はい」
歯に挟まった様に歯切れの悪い返事である。
その上妙におどおどとしている。
「何を、隠しおる?」
どうせ、隠しても元である白銅には、見破られてしまう。
「白峰はその・・・私を一度消失させて、呼び起しました」
「なに?」
「と、と、澄明様との睦事をよう、見て白銅様に伝えよと・・・」
白銅は黙って式神をくじり去った。
澄明のそのさまを聞きたくもなければ、
それを見た式神も許せなかった。
「阿呆・・・・」
「不知火?」
何時の間にか不知火が来ていたのに
白銅は気が付いていなかった。


「白峰の聖域に式めが入るる訳がなかろう?」
「いや、じゃが、くじり殺されよったが、皆・・」
「じゃから、阿呆じゃと言うておる」
「・・・・」
「判らぬか?女を知らぬ奴はこれじゃ」
「何だと言うのだ?」
「式が入れるような結界を白峰が張る訳が無かろう?」
「じゃが・・・・」
「白峰がの、結界を緩ませた故入れるのじゃろう?」
「そうよ:」
「まだ、判らぬか?
白峰が澄明を抱くのに気を取られるが故、
結界が緩むのであろうが?
即ち、式が入れたという事自体が
白峰が潤房の最中であるという事であろう?」
「あ」
「わざ、わざ。それを式に見させておいて
白峰が気がつけば腹立ちの末、くじるに決っておるわ」
「・・・」
「帰って来ても、御主の嫉妬でくじり殺されるわ。
それが初めから判っておっただろうに・・・。
生き死にが関わっておれば聡い故な。憐れな」
「すまなかった」
「わしに謝っても仕方なかろう」
「・・・・・」
「式神など飛ばした所で、澄明は帰って来ん。
なにか、手立てを考え付かぬのか?」
「今更・・・」
「ならば、諦めろ」
「くっ」
「諦めもできず、何か言えば、遅いわ?今更?聞きとうもない」
「・・・・」
「一戦、交えるか?俺も手伝うぞ」
「馬鹿な。死んでは元も子もない」
「諦めもせず、かといって何もせず、
生きているのやら死んでいるのやら判らぬよりは
いっそ白峰に挑んで殺さるるば良い。
澄明の心だけはお前の物になろうて」
「死ぬ気で・・・惚れよとか?」
「そうよ」
「・・・・」
「男なら好いた女子の一人、無理矢理でも、
己の物に出来ぬ様で何が男よ。
白峰に負ける筈だわの。
身体なぞ幾らでも白峰にくれてやれ。
心一つ捕りて男の本望よ。
傀儡を擁いていたと白峰に一泡ふかせてやれ。
違うか?白銅?」
「おうておる・・・」
「まあ、判れば良い。動こうぞ。白銅。愛宕山に付いて来い」
「愛宕山?」
「おおうよ」
「弁財天であろう?」
「蛇の道は、蛇といおう。
蛇に聞けねば、弁才天は蛇使いじゃ。
少しでも、手繰れる物があらば、
それを手繰ってゆくしかなかろう?」
「しかし、いくら、弁財天が使いに蛇を用いていたというても、
白峰も神格。
よもや、弁財天の使いに等は遣われておらぬまい?」
「すぐに、白峰を押さうる物を望む故、そういう事を思う。
お前、何時か、言っておっただろう?
草薙の剣が事よ。あれを考えておる。
それがあらば、白峰を裂く事も成せるかと、思うての」
「・・・・・」
「お前が、そのような事を思うのも、
なにかにきこしめられたのかと思えてもおるしの。
蛇を遣うておるぐらいじゃ、
弁財天も何ぞ、知っておるやも知れぬ。
知らぬでも元々ではないか?」
白銅も重い腰をやっと上げると
不知火に付き従うように愛宕山方円寺に上がって行った。
今は静かな佇まいを見せているが、
ご開帳の日ともなると
弁財天を信奉する者の人の波でごった返す境内を
不知火は突っ切っていった。
「あいすまぬ」
不知火が呼ばわる声に住職が出てきた。
「はい。いらさりませや」
「御くつろぎの所、あいすまぬの。ちと、御知恵を拝借しとうてな」
通り一遍の挨拶をすると、住職の方が
「陰陽道の不知火様の御力になれるやらどうやら・・・」
と、ひどく慎まし気な返事を返して来た。
が、そんな事で引くような不知火でもない。
海千山千の人擦れをしている男である。
気の付かぬ振りでけろっとした顔をして
「おおう。わしを知っておるなら、話が早いわ」
言う顔が瞬時に引きつめられると
さすがに住職も何事かは察したのであろう。
低く、くぐもった声で
「なにぞ?」
と、尋ねると、居住まいを正した。
物腰の柔らかさと腰の低さが逆に
この住職の徳の高さを知らしめる気がした。
「なに、その男が好いた女子を蛇に魅入られての」
「さようで・・・」
じっと、白銅を見ていた住職であった。
白銅とて陰陽師であるのはすぐに判る。
北の不知火と一緒に蛇に魅入られたなぞと、
簡単に解きほぐせる事で雁首並べて
戯けた事を泣き付いて来る訳がない。
「御待ちくだされ。私どもに思いが湧くかどうか、思うてみましょう」
じっと、弁財天の前に座る住職である。
弁財天は妖艶な姿である。
直垂れ一枚が女の大事な誂え物を隠しているが、
惜しむ事もなく双の乳を晒している。
確かにその台座には不知火の言う事を裏打ちするかのように、
使いである蛇の彫刻が施されていた。
ぐうと、下げられた頭を擡げさすと住職は
「女護を見やったは・・・白峰?」
「おお。悟りの早い事だの」
「あふりが立ったのは、私どもの耳にまで届いております。酷いことに・・・」
「恐ろしい事よの」
「はい。難しい事で御座いますな」
住職はちらりと白銅を見ると
「思い浮かぶは草薙の剣」
「やはり、そうか」
「でしょうな。貴方方がそのくらいの事は捉えておると、思うておりました」
「それが、何処にあるか?」
「それで、蛇使いに聞こし召せと?」
「あ、いや。まあ。そうだ」
この男も読むのである。
ならば、一度口に出した言葉を隠してみても、詮無い事である。
「よろしい・・・。もう、しばし、思うてみましょう」
半刻も座り続けたであろうか。
白銅も不知火も無言で待ちつづけた。
「近江、大津湖。葛篭折りの南。
八重坂の水の下。
落ちはて朽ちるを拾い上げたる者あり。
その手に玉をはみて、黒くうねる様さも蛇に似たり。
なれど、天空に至りて、剣を与え得ん」
「おい」
不知火が白銅を見ると白銅も不知火を見ている。
「よろしゅう御座いますか?」
そう言うと、住職は御布施を求める手付きをして見せた。
不知火は懐より銀の粒を出して住職に差出した。
住職は一瞬驚いた顔を見せたが
「やれ。これですから、弁財天は有難い」
と、呟くと払いをした後にその銀の粒を受け取った。
礼を述べ本堂より外にいでくると、不知火が
「欲どいと思うか?白銅?」
と、尋ねた。
「いや、あれを言わさしめ、こちらも返しをせねば
どんな帳合いを取られるやら。
助きをよう判っておいでの方だ」
「うむ」
「しかし、黒き龍?と」
「行って見るか?近江の八重の葛篭折り。
その、南の八重坂のある所といえば竹生島の事やもしれぬ」
「はい」
そうそうに旅支度を調えると不知火と白銅は
近江の竹生島に向かった。


七十七夜
下されない。ひのえは確かにそう思う。
裁断を下すには、白峰の思いが余りにも深すぎる。
政勝の事が、ひのえの手の中から落ちて
砕ける玉のように八方に飛んで行くように感じられた。
「まだ、思うておるのか?」
「・・・・」
「構わぬ。それでも、ひのえ、わしを見てくれ、の?厭か?」
「いえ・・・」
白峰がひのえの口を吸う。それをつと、離すと
「まだ、思うておるのか?」
同じ事を口に出す白峰の顔が切なげである。
その白峰の手をひのえは思わず胸に抱き締めた。
そうされれば白峰の手が大人しくしている訳がない。
ひのえの胸の先を柔らかく手の平で転がし始めた。
「答えて見よや」
ぐうううと摘まんだ胸の先を押し潰す様にされて
ひのえがその疼痛に喘いだ。
「あ・・あ、もう・・判りま・・せぬ」
「良いか?こうも良いか?」
爪の先で更にきつくひのえの乳を責めてゆく。
きつい痛みであるのにひのえの声は
甘やかに疼痛を訴え始めていた。
「ああ・・よい・・・」
しとどほとが濡れて行くのを、ひのえも感じていた。
白峰も頃合と思うたか
ひのえのほとを剥き出しにすると己の物を滑りこませた。
「ああ」
入ってきた物の感触にひのえが気がついた時には
もう鋭い快感が押寄せて来ていた。
「政勝とこうしたかったか?ひのえ?」
白峰の躍動により寄せ来るものに抗いながら
自分でもやけにはっきりと、ひのえは
「政勝殿はとうに、かのとのもの」
と、答えた。
「なれど、諦めておらぬわ」
「ああ・・」
荒い息の中からひのえは
「・・・諦めております・・・」
さらにそう、答えた。
答えねばならないと、思うのである。
「わしは、ひのえを諦めずにここまできておる。
のう、ひのえ。わしは、諦められぬ・・・ひのえ・・・ひのえ」
欲情がその身を狂わす。
白峰の微動にさえひのえの中が狂おしく疼くほど
白峰の物に成変わっているその身体を、
さらに白峰が高く持ち上げると己の物を深く突き入れ
ひのえの体を白峰の身体の上で躍らせた。
「ああああ・・・・・」
いつ、果てるのかさえ、判らぬ白峰の精の強さを、そのまま受けて、
ひのえの中が小刻みに震えるあくめをいくつ迎えた事であろうか。
「それでも、もう、わしの物じゃ。のう、ひのえ?良かろうて・・のう?」


不知火も白銅も只何か、思い浮かぶ事がないか、
それを宛てにしてじいいと座っている。
あれから竹生島まで出かけたのである。
船を探しだすと、嫌がる漁師に不知火はやはり銀の小粒を見せた。
「これだけ頂けるんで?」
思わず手を差し延べた漁師であったが、ぶるぶると首を振ると
「いや、やっぱり、いかねえ。祭礼の日なら、判るが、
普段に水神様の社になぞ、行ったら漁が購えなくなるに」
なんの言われがあるのか判らないが、惜しそうに手を引っ込めた
例えここで今銀を一粒が如き貰ったとしても
この先のたっきの道を無くせば、あわないのである。
「ならば、こうしょう」
それでも、不知火は漁師の手に銀を握らせて
「わしらが舟を漕いでゆこう。舟ならば貸せよう?」
しばらく考えているようであったが、
ばちが当たるのはこの人らだわとでも、思うたのであろう。
承知すると、くどいほどに舟の返す場所を説明する。
「あの、桜の木があろう?
その、後ろの欅の大木は、沖の方からもよう見える。
あれを、目指し帰ってきたら
あの桜の木に繋いでくるれば良い」
「判った」
舟を湖上に滑り出させると、白銅が櫓を漕いだ。
「進まぬの。日が暮れてしまうわ」
笑って不知火が言うが替わろうとしない。
この男も櫓なぞ、握った事が無いのである。
「難しいものよな」
遠くに竹生島が見える。
漁師に言わせれば目と鼻の先なのであるが二人には、ひどく遠い。
「帰りは早かろう」
不知火の言葉の通り、
白銅の櫓を漕ぐ手が少しずつこつを掴み始めると、
舟が右に左に触れる事もなく進み始めていた。
白銅は瀬を見ると、その欅を確かめた。
ひとおり、郡を抜いて聳え立つ木の枝振りが見事である。
『確かに、判り易いわ』
やっとの思いで白銅が竹生島に舟を着けたのは、
瀬を出て半刻以上も経った頃であった。
船着場に舟を寄せつけると切り立った山肌に
急な石段が設えられてあるのが目に入った。
「何段あるのかの?」
首が痛くなるほど、上を向いても、まだ、石段が続いている。
「八坂どころではないの」
頂上に昇るのに思い遣られる事なのに
そう言う声が軽く弾んでいるのは、
やはり、ここが方円寺の和尚の言う場所に
間違いないと思うからである。
切り崩しただけの崖に玄武岩の石段を、
しきならべてあるのだが、恐ろしいほど淵がない。
「落ちたらひとたまりもないの」
そう言うほどに、二人は、
かなり上まで上がって来ていたのである。
「しかし、この、石を切り出して
ここまで運んで来た者も、達者な者じゃな」
「これでは舟が沈もう」
「阿呆。浮力を使うのじゃろうに」
「成る程」
石を舟に載せず海に潜らせて行くのであろう。
が、それでも、この岸のない浜から、
石を手繰り上げるのは容易な事で無かったと思えるのである。
頂上に着くと蒸し暑さはあるが、
浜風が強く拭きぬけかなり涼しかった。
何処かで春蝉のなく声がすると思うとちちっと鳴きやんだ。
「何者じゃ?」
その声と共にぬっと、現れた男は背が高く、
いかつい顔で年の頃は三十半ばを越していようか、
すこし、剣のある目付きをしていた。
「なんだ?陰陽師風情が何の用だ?」
一目でそれと見ぬくと高飛車な言葉を投げ掛けた。
不知火はその男がくりくりの磨髪であるのが判ると、
「堂を守るのは、御主であるかな?」
と、問い正した。
男からはむっとした返事が返って来た。
「俺が守っておってはいかぬか?
もそっと、高尚なやつばらがおると思っておったか?」
自らの品のないのを認めているらしく、
よく自分を心得た口のききようである。
「なに、御主に用があってきたわけではない。
まともな口さえきければよいわ」
いがみ合いになるかと思うような口を返すと
不知火はにやりと笑って見せた。
不知火が妙に落ちつきはらしているのと、
なんの用事か気になったのであろう。
「ほう。わしにそのような口を利く奴を見たのは初めてじゃ。
で、なんの用事できやった?」
「ふん。わしも御主にはじめて口を訊くのが
こう雑言になるとは思うておらなんだがの、
聞いてくれる気があらば尋ねたい」
「じゃから、言えばよかろう」
「聞いたは、よう答えんという生半可な坊主が昨今では多いでな」
「そこらの坊主と一緒くたにするな。いちいち気に障る奴じゃの」
そう言う目が笑っているのは、
この男が不知火の怖気も振るわぬ物言いが気に入っているのである。
「そうか、ならば、聞くがの」
すでに、不知火の口術に嵌まっているのであるが、
次の言葉を言われるまで男もそれとは気がついていない。
「なに、草薙の剣の事でな」
「ん!あ、なんというた」
もう一度男が聞き直してくるその言葉尻で
間違いなくこの男がそれを知っていることが判った。
「草薙の剣」
「あ、おお、おおう」
やけにどもりあげると慌てて男が汗を拭いた。
「どうした?しっておろう?知っていて言わぬ、くそ坊主ではないじゃろう?」
「お、お、おうよ」
ひどくたじたじしていたが、どうせ同じこと。
いずれには晒け出さねば成らぬ事なのである。
「いかがかな?」
「ここには無い。のうなった」
「な?」
「秘宝の事、誰も知らぬ事を何故?」
「そんなことは良いわ。のうなったというたの、ではここにあったのだな?」
「ああ。黒龍が現れての。
元々ここは、水神を祭っておったのじゃ。
その水神が黒龍なのだがの、天空界に上がられてしまっての。
その折にこれを守り本尊にせよというて
渡されたのが草薙の剣なのじゃが、
いつ、むう、なな、八日まえだの。
黒龍が現れて持って行きおった。
元々、黒龍の物ゆえわしも黙って渡すしかないのだが・・・・
返してくれるのであろうか・・・」
「成るほど」
「何が成るほどじゃ。それが無いとなると、わしは・・・」
「いや。すまぬ。漁師めがえらく怖れておったげにな。
それで謎が解けたきがしての」
「なぞ?」
「どうせ、黒龍が草薙の剣を渡す折に、
誰にも言ってはならぬ。
剣を日の元に顕わにする事があらば
あふりを起こすぞと言うたのであろう?」
「何故、判る?」
「あれほど、漁師が恐れるには訳があろう?それだけよ」
「のう?おぬしら草薙の剣を探しているのであろう?」
「ああ」
「ならば、若し、若し、見つけたればここに返してもらえぬか?」
「黒龍から奪い取って来いと言うか?」
「そ、そうだの。何を思うてか
千年の昔に渡した物が必要になったのだろうに。
やはり、水神様が持っておられようの」
「そうだろうの」
「しかし、なにゆえ水神様は、剣を持ち去りてや?」
「わしらもそう思う」
「お前らはなにゆえ?」
「わしらか?・・・わしらは、蛇退治じゃ」
「つかぬ事を聞くがの。
草薙の剣でなければ倒せぬような蛇とは白峰大神?」
「おおう、ここまで、届いておるか?」
「凄まじい瘴気を、あげておるときいた」
「うむ」
「白峰大神が何をしやった?」
「お?」
「いや、草薙の剣で討とうというのであろう?」
「うう、うむ」
白峰から見れば白銅が横から懸想しかけているのにすぎない。
澄明がすでに白銅の物である所を
横から白峰に掠め取られたなら言い様もある。
が、そうではない。
「どうした?生糞坊主より悪いようだの?」
「そうだの・・・」
返事を考えている不知火も、黙ってそれを認めるしかない。
「よいわ。黒龍はそれを持ちての。
ここより東の方に泳ぐように空にあがっていったわ」
「東?」
「どうした?おぬし等東から来たのか?」
「そういう事じゃ。他に何かいうておらぬかったか?」
「千年の長きの因縁を・・うじゃらこうじゃら・・・」
「そうか。若し、我らがその剣を手に入れ本懐を遂げた後には
きっとここにもってこよう。それでいいか?」
「宛てにはしておらぬが、さなれば、宜しく頼む」
そして二人は帰ってきた。
そして、ため息をついた。
「黒龍を手繰る事になるとは夢にも思わなんだ」
「しかし、何故?黒龍が?」
「判らぬ。千年の昔からの因縁というたと言っておったの」
「ああ」
「ならば、九十九(つくも)を呼ぶか?」
九十九善嬉。
自らの前世が鬼であったという。
その男はやはり四方神を担う陰陽師のひとりである。
法術の腕もさながら、見透かしの腕に狂いがない。
それもその筈で、この男は自分の前世だけでなく
人は勿論、そうでないものの前世まで読み下した。
が、身体が弱い。それも訳がある。
前世を読むせいである。
本来触れては成らぬ事を読み下して無事に居られる訳がないのである。
「いや。そこらの狐つきの因縁を手繰るのとは訳が違う。
相手は黒龍。それも天空界にあがっておるのだ。
その後ろに何があるか判らぬ・・・九十九が狂うやもしれぬ」
天空界の密事まで拾い、
居並ぶ神との関わりまで読み始めてしまう。
九十九の精神がその重みに耐え切れず狂い果てる。
そう言う不知火である。
「そうか」
鬼であった前世に神仏を崇め行を修め、
草木を食らい、凡そ殺生と名のつくことを戒めてきた。
その前世が死ぬる時に
「嗚呼、人になりたい」と言うたのを信奉する
阿弥陀如来が聞届けたのだと言う。
その、九十九を狂わすわけにはいかない。
ましてや、鼎の狂った姿を見てきた白銅である。
黙りこくる二人のいる家の屋根をしとしとと雨が落ちて来ていた。
「梅雨にはいいたの」
呟いた声が夜のしじまに響く様であった。

八十八夜
白峰はこの所よく眠る。
朝に昼に夜に供物を届けてくる巫女の声に
はっとしたように目を開けると、
必ず白峰は自分から供物を取りに行く。
巫女の方はそれを置くと一目散に山を下って行く。
うっかり白峰の姿なぞ覗こうとしたら、どんなあふりがくるか。
自分から姿を現わさぬ限り
触れる事のならない掟のような物を巫女は判っている
扉を開けて供物をとりいれると白峰が
ひのえの前に供物を置き食べるように言う。
「精をつけねば、ややが育たぬぞ」
確かにひのえは孕んでいる。
軽いむかつきが胸に上がってくるようになっていた。
悪阻である。
『やはり、宿ったか』
悪阻が上がってこぬでも、もう、二月以上つきの物が無い。
その上、連夜の白峰の責めである。
孕まぬわけがない。
「ひのえ、女子じゃ」
「は?・・い」
「宿ったのはの、女子じゃ」
「もそっと、馳走を出すようにいうてやらねばならぬの」
「いえ・・・」
「食べにくうなってきおるのか?」
「あ」
「そうか、わしは其れこそ朝の露の一滴でも飲んでおればよいのじゃが、
ひのえは、そうはいかぬぞ」
「はい」
「身体をいとえや」
ここ、しばらく白峰がひのえを求むるのが柔らかくなって来ている。
ひどくひのえを喘がせるのを辛抱するかのように、ゆっくりと動く。
性の強さは相変わらずであるが、
それでも、白峰は行き果てる。
「性があってきておるのじゃ」
とも
「ひのえのものが、よう、わしに絡むようになってきおる」
とも、言う。
供物にくち果てると、ひのえは、少し横になった.
「しんどいか?」
「あ、はい」
白峰の寵愛も柔らかくなっているが、変らず長い。
「ひのえ.抱かずにおけぬ日はないのじゃ。
百日百夜の願を懸けておる故、すまぬの」
「・・・・・」
「子を孕みて後までかように責めねばならぬのもわしも辛い」
そう言うと、白峰がひのえの身体を寄せつけた。
「それでも、ひのえ?どうじゃ、しぶりがこよう」
白峰のじつうを受けようとひのえのほとを潤ます渋りが沸いて来る。
「あ・・・」
軽く胸に宛がわれた白峰の手がぐるりと動いただけである。
「よいの・・・」
白峰がひのえの裾を肌蹴ていった。


九十日・・・・九十五夜。
白峰が蛇の姿でいるようになった。
「恐ろしいか?」
白峰はそう、聞くが、別段ひのえには、気に成らない。
「さすがに、わしも、精が尽き果てそうじゃ」
人の姿でいようとする事も白峰を、草臥れさせるのである。
「のう、ひのえ」
白峰がふと黙った。
やがて
「二つ身になった後もここにおらぬか?」
「・・・・」
「わしも今だから明かすが、もう身体がもたぬ。
その、腹の子が生まれる頃には、天空界に帰らねばならぬ」
千年の永きに渡ってこの地上で生き抜いてきた
白峰がとうとう天空界に戻ると言う。
「わたしのせい・・・ですか?」
精魂尽き果て白峰が蛇の姿でいることも出来なくなってきている。
「いや、ひのえを望んだのはわしじゃ。
それでもの、気になるのはそちの事じゃ」
白峰が天空界に上がった後のひのえの行く末をいうのである
「・・・・・」
ひのえの胸にふと去来するものがある。
「わたくしはどちらを産みます?」
「?どちら?」
「蛇・・・・ですか!?人ですか?」
じっとみていたが
「判らぬ。お前がわしを思う気持ちが強ければお前の容で
わしの思いが強ければ、わしの容じゃろう」
「そうですか?私もどちらが生まれるかによりて、
先行きを決めとう御座います」
「蛇ならどうする?」
「・・・・・・」
「お前の気が、わしの物になっておれば人の容で産まれるわ。どうじゃ?」

白峰の形で生まれれば、ひのえの思いが白峰の物でない。
が、今のひのえには自分の思いの丈が判らない。
百日に近い情交を経てひのえの心が白峰をけして憎くは思っていない。白峰がひのえに寄せくる思いに対しても
何処かで憐れなのを通り越している。
それは愛しいという気持ちなのかもしれない。
「蛇で産まれたれば、その子は・・?」
「ここで祭神として奉られようの。代継ぎじゃからの・・・」
「人の子であらば、それは私の想い?」
「そうじゃ」
白峰がひのえの身体を巻き上げ始めた。
「後、四日。わしは、そのあともここにいる。
子が生まれる頃にはわしもいきたえよう。
それまでは、ひのえ・・・逢いにきてくれるな?」
持上げた鎌首を振ると白峰は人の姿になった。
両の腕でひのえがしっかりと包まれ、
抱き寄せられると、ひのえはその胸に顔を埋めた。
白峰が死ぬ!?この身体でひのえを包む事はなくなる・・・。
「こうやって、腕に擁いているだけでもよい。
共に生き果てたいがもう、無理じゃ」
ひのえの口を啜る白峰の手が伸びてくるのを、
じっ、とひのえは待つようになっている。
『これでも、私は白峰の物ではないと言えるか』
「ああ・・・」
白峰の動きにひのえの小さな歓喜の声が上がるのを、
白峰は食入る様に見ていた。
posted by 憂生 at 17:39| Comment(0) | 再掲載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

それから・・/ 永沢祐稀アダルト小説A

博美をバックから攻めていた俺はちんぽで博美のおまんこをひろげる。
挿入したまま、斜め下方にちんぼを
おしてゆくと、
わずかに膣壁とちんぼのあいだにすきまができる。
そこに指をいれ、ちんぼと逆方向に膣をひきあげておいて、
ちんぼをいれなおす。

すると、博美の膣の中に空気がはいりこんで、
俺が動くたびに
ぶぶっつって音がする。
激しく動くと、ばふばふって音が
風呂場の中にこもり、
博美は
「いやん・いやん・・」
って、いいながら、
嫌なのは口だけで
尻は俺に向かって
高く掲げられ
俺にいやらしい音を
たてさせるように、
非常に協力的だ。

博美は少しだが、M傾向をもっている。
だから、
こういうプレイが多く
このほかにも・・・。

ああ、話の途中だけど、
「昨日・・」をよんでもらったかな?

今回のカテゴリー「それから・・・」は
その「昨日・・・」の続きからだ。
へえ・・・。
会社の***さんって、博美って、名前か、って誤解するなよ。
深夜になって、やっと、アパートになって帰ってきたら、
隣の部屋の博美がバイトからかえってくるのに、でくわしたんだ。

俺と博美が痴態プレイを楽しむようになるまでの
今までのいきさつもいずれ書こうと思ってるけど・・・。

帰ってきた俺にHしようって、誘いをかけてくれたのはいいんだけど・・。
会社の***さんの香水にきがついて、
いろいろ、尋ねてくるのが、参った。

まあ、そんなのは、あとまわしにして、
まず、俺はシャワーを浴びたかった。
***さんの粘っこい愛液が俺のまたぐらに
へばりついていて、
軽く酸味のある匂いがあがってくる。
わかる奴には
Hしてきたなって、わかる。
こんな匂いをつけたままってのも、
勘弁して欲しいってとこだ。

で、シャワーをあびてる
そこに、博美がはいってきて、
いつのまにやら・・・
冒頭の状態になってたわけだ。

俺は博美の手首に輪ゴムがはまってるのを
確認しながら、
シャワーに手を伸ばした。
ついでに、ストローの先をライター
焼いて角を丸くしたものが
洗い桶に浮んでるのも確認した。

ばふばふ、音を立ててる場所に
俺はシャワーを浴びせかけてゆく。
博美の膣の中から
透明な愛液と混ざり合った白く濁った粘液が
混ざり合って降りてくる。
コレをシャワーで洗い流してゆく。

やがて、膣の中にシャワーの温水が混ざりこみ
ぶちゅ、ぐちゅって、複雑な音をたて、
博美の愛液がうすまってゆくと、
俺のちんぼに
博美の膣壁がざらついた感触を
すらせる。
薄められた愛液がわずかな粘りを見せておまんこから、
ちんぼについて、でてくるけど、これもシャワーに
たたきながされる。

その頃になると、博美のよがり声が
さっき、俺が確認した「愛具」を要求するものになる。

「ねえ、いつものようにして・・」
いつものよう・・・。
それはこういうこと。

俺はいったん博美の身体を離し、
博美の手首の輪ゴムをとりあげる。
そして、俺の指に輪ゴムを待機させ
博美の乳首をひっぱりあげて、
その乳首の根元に輪ゴムをまきつけてゆく。

きつい輪ゴムの折檻に博美の声が鋭くなる。
「祐・・はやく・・あれして・・・。ねえ、
して・・」
あれ・・は、細工したストローを意味する。
そのストローで俺は
博美のクリトリスを吸い上げる。

ちょっと、太目のストローに無理やりクリトリスが
吸い込まれると
膨張したクリトリスはストローから出ることが出来ずにいる。

むりやりクリトリスを摘まれそれを吸い上げられる。
この捕獲がずっと維持される。

博美の惨状たるや、
俺は半分笑いがこみ上げてくる。
おまんこの上にストローが付きたてられ
博美は堪えきれず勝手に腰を振り続けるものだから、
ストローがぷらんぷらんと揺れ動く。

「祐・・いれて・・いれて・・
早く・・あああああああああああ」
可愛いそうに・・・。
乳首への折檻とクリトリスへのゆるぎない刺激で
博美のおまんこから
たらたら、愛液が落ちてきている。
「祐・・ねえ、ねえ、ねえ」
振り続ける腰をとめて、さっきと同じバック攻撃を
要求して博美がうずくまった。
「あ、ん、ん、ん」
ソノわずかな間もストローと
輪ゴムは博美を攻める。

「いれて、いれて、いれて・・ねええ」
うわごとのように繰り返し、俺を要求する
博美をじらせる。
じらせた後の博美の肉のきわまりがすごい。
膣の中がもっこり、ふくれあがり、
何を入れても、どう動いても感じる、。

それを楽しみたくて、俺もジッと辛抱のいい子でいたよ。

博美の限界を待って
俺は侵入を開始する。
博美のその場所は
まるで、なまこのような感覚。
表皮がぶつぶつしたなまこを
思い返させる、膣壁のせりあがりが、
俺に奇妙な感覚を味あわせる。
なまこは俺のぐるりをつつみこみ、
ぴったりと
俺にはりつき、
俺をすいこむように、くるむ。

俺はストローに手を伸ばし
軽く引っ張ってやる。
そして、ゆるやかにちんぼをなまこにこすりつける。

えもいえない、ってのは
こういうのをいうんだろうな。
博美の声が
悲鳴にちかくなる。
「いい・・あああ、ああ、いい・・」
どこが、いいんだよ。
俺が尋ねてやると
「あそこ・・・あそこ・・・」
博美が答える。
「あそこ?」
そりゃ?どこだ?
おまんこ、その言葉を出すのが、
まだ、恥ずかしい?
そんな、余裕がおまえにあるわけ?

俺は小刻みにストローを引っ張り、
ちんぼを突き動かしてゆく。
「いや・・・ん・・・しびれ・・る・・
あん、あつい・・・あつ・・い」
「あん?どこが?」
博美は俺がいわせたい言葉をわかってる。
博美のためらいはあつい肉の棒で払拭される。
「おまんこ・・おまんこよ・・・ねええ・・・ああ・・ん
こすって・・・ちんぼでこすって、もっと、おまんこ、こすってえええ」

合格。

俺・・博美の望みどおりに
博美のおまんこをばふばふいわせて、
フィニッシュを与えてやった。

って、そうだ。

この記事を読んで、俺も(あたしも?)
ストローであそんでみたいなんて、
試すのもけっこうだけど、
まあ、やめた方が良い。
クセになるってのもあるけどな、
俺は初めて、博美と身体を合わせたとき
博美のクリトリスに驚いたんだ。

その原因がストローだったんだけど、
博美のクリトリスは
通常の女のものと違い、
ぴょろんと、のびていたんだ。
小指の先がおまんこ上部から、
顔を出している。
そんなふうに見えるくらいにな。

もともと、そういう構造の女がいるか、どうか、俺は知らない。
だけど、それを見たとき
俺はこいつに恋愛感情をもてないと思った。
やりマンの女でしかない。ってな。

どういういきさつで
こんなストロー遊びを教え込まれたのか、知らないけど
俺がもし、本気なら、
こんなことはしない。

だけど、俺はやるだけの女だと
博美の位置を決めたとき
俺も博美をストローで遊ぶことにした。

次の男が他の男の手垢にまみれた女に
本気になるか、どうかは、知らない。

屈辱的で猥らな「博美は男のおもちゃです」って看板が
クリトリスの変形だ。
これは、もう、なおらないぜ。

教え込まれた感覚ももう、博美から離れない。

俺がしてやれることは
ちんぼをつきこんでやることだけ。
って、ことになるんだが、

あんた・・。
この記事を読んで、ためしてみようと思った・・あんた。

こういう女をつくっちまうってことだけは、
覚悟しておけよな・・。
posted by 憂生 at 17:33| Comment(0) | 再掲載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

セクシュアル・モーメント1

あっちもこっちもそれなりにそれなりに・・・
『うまくいってるじゃないかよ』
ボーマンはつぶやいてる。
ボーマンがいろいろ暗躍したのは、言うまでもないことだけど
なのに、ボーマンは
「ふー」
って、ためいきをついている。
「あん?どうしたのさ?」
って、そんなボーマンをレオンが覗き込んだ。
「あーん?」
ちっ。こいつも、あいかわらず、うまくいってやがる。
ちっとも、ボーマンになびかないレオンの瞳を
真正面から捉えると、
瞬きもせずレオンを見詰めたボーマンである。
「ん?」
こんなにじっくり見つめられると誰だって
つい、目をふせてしまい、軽くうろたえる。
だのに、ボーマンの熱いまなざしなんか
レオンはちっとも気にしない。
「おまえなあ・・」
「なに?」
文句の一つも言いたくなる。
だのに、ちっともレオンは気が付きもしない。
「なあ」
「何?はっきりいってよ、らしくないじゃん?」
こんな切ないまなざしを向けてるってのに、
なーんにも感じないでオマケに何?
挙句、らしくない?やるせないったらありゃしない。
「おまえさあ・・・」
「何?さっきから、じれったいよ。言いたい事ははっきりいわなきゃ」
はてには怒られちまうのかよ?
「もう。やだなあ。いったい、なんなのさ。早くいってよ」
こんなこともうちっといいムードでなきゃ、いえねえじゃねえかよ。
レオンに何を言いたいボーマンになっちまったのか、よく判んないけど、
色気もそっけもない態度のレオンに
ボーマンはますます何も言えずに黙ってしまっている。
「・・・・」
「もう・・。僕、そんなに暇じゃないんだよ」
ボーマンがしゃべりだすのが遅い。
じれったくなってレオンは文句を言い出してる。
『なに言ってやがんだよ。
クロードにはせっせと時間をさいて
熱っぽい視線をおくってるくせに』
「なあ・・レオン」
「もう。だから、なに?」
「ん・・・なあ。俺の事どう思う?」
レオン。普通に考えりゃこれは十分秋波をこめられたせりふなんだぜ。
なのに、レオンはボーマンの言葉どおりの意味に受け止め、考えていた。
「うーん。そうだね。上手にニーネにばれないように浮気するよね。
それって、マメっていうか。すき物っていうか」
「そ、それ。なにをいいだすんだよ」
「だって、ほんとうのことじゃない。ニーネに悪いっておもわないの?」
「次、次元がちがうんだよ」
レオンは首を傾げた。
「ふーん。浮気って単なるお遊びってわりきってるってこと?」
「そ、そういうわけではない」
どうにも、あらぬほうに話が流れてゆくのを
ボーマンは食い止めきれない。
「じゃあ。どういうわけさ?」
「ん」
ぐっと詰まってしまうボーマンなのである。
だけど、レオンの見解がボーマンの中に一つの回答を見せ付けてきた。
ひょっとして、レオンが落ちないのは
ボーマンが本気で一心不乱じゃないせい?
「遊びなんかじゃねえんだ。それなりのところでみんな愛しいんだ」
そう、おまえのことだって。
ボーマンはレオンをじっと見つめた。
その瞳をまじまじとレオンは正面から受け止めて、肩を竦めて見せた。
「ふーん。やっぱし、よくわかんないや」
「ち。お前みたいにクロードのことばっかししか見えねえ奴には
わかるわけねえさ」
「はん。おあいにく。僕はそんな軽いやつじゃないよ」
「るせえーな。お前みたいに馬車馬の目線でクロードだけを
みてるやつこそ、一端マスクをはずすと、こわいんだぜ。
世間には、いろんな奴がいるってことをお前はしらねえで、
クロードにはまちまってる。でも、俺には、それが判っている」
「何?のろけ?いろんないい人知ってて、
だからニーネを選んだんだっていいたいわけ」
まさにそのとおりだ。
「だったら、そんな素敵なニーネのとこで
何でおとなしくしてないのさ?」
「俺の世間がひろいようにな、俺のハートも広いんだよ。
いろんな心がすんでるんだ」
「あー。わかんない」
「いろんな価値を知った上で
クロードを選んでねえおまえにゃ、わかんねえよ。
どうしょうもなく引かれちまう人間がたった一人しかいないお前にゃ、選び取る価値って物がわからねえ」
辛い恋もした。
自分の中の欲求の深さに溺れきった事もある。
いろんなことをくぐりぬけ、ボーマンは自分のラインの引き方を決めた。
『守る女はニーネしかない。どんな事をしてでも守ってみせる。
だけど、もしそれが出来なくなったら俺はニーネを殺してでも、守る』
ボーマンの言う事はニーネ自身を守るという意味ではない。
自分だけの特別な女性である事を死守してゆくということである。
それがボーマンの勝手に引いたラインである。
ほかの存在とニーネとの格段の違いがそこにある。
他の奴らがどこへいこうが、何をしようがどうでもいいのである。
が、ニーネだけはボーマンを見つめ
ボーマンだけのものでなければならない。
幼い子供のようにボーマンは
ニーネからの愛情を独占しなければ気がすまない。
『アイツが俺を見なくなったら・・俺はきっと狂い死ぬぜ』
まったく勝手我侭な思いをのぞみたくなるからこそ、
ニーネが特別な存在であるんだろうけど。

ボーマンが何気なく話したことが、
この先のレオンに起きてくるとは予想もしないボーマンなのであるが
「ま。帰るぜ」
と、ボーマンが切り出したのは、
レオンに会いにやって来たクロードが
研究室にはいってきたせいでもある。
「あれ?ボーマン。もう、かえるの?」
ボーマンが横をすり抜けてゆくのをクロードは
お愛想で声をかけるに過ぎない。
だって、クロードの瞳はもう、レオンをおいかけてる。
「ああ」
ボーマンの声色がどこか無愛想であるのに、
レオン同様クロードもそんなことなんかちっともきがつきやしない。
『まあいいさ』
ボーマンは、ふうとため息を一つついて研究室を後にした。
それから・・何日たったのだろうか。
レオンからちっともお呼びがかからない。
調剤する事もねえ?製薬も足りている?
まあ。それでも、そろそろ在庫の点検に行くか
とボーマンはもっともらしい理由をつけて研究所に出かけて行った。
研究室のドアを開けると相変わらず
一等最初にクロードが目に入ってくる。
『どうせ・・鼻の下を伸ばした、デレ助(それは何ですか?ボーマン!)になって』
「ない・・・」
ひどく険しい目つきになってる事にクロードは自分でも気が付いてない。
むろん、入ってきたボーマンにも気が付きもせず、
何かを食い入るように見てる。
じっとにらむようなクロードの視線が何にそそがれているのか?
ボーマンの目線がクロードの見ている物を何であるか確かめる為、
クロードの目の先を追っていた。
「はーん?」
むろん。そこにはレオンがいる。
これは相変わらずな事であるが、そのレオンの横に見かけない奴がいる。
そして、クロードはそいつをみてる。
いや、正確にはそいつとレオンをみてる。
「なんだよ?」
それで、そんな顔をしてみてるのかよ?
やだね。嫉妬かよ?
ボーマンはたあいもないクロードのレオンへの執着と、判ると
やきもちの鬱憤晴らしに、いろいろ愚痴を聞かされても、たまらない。とばかりに、ドアの外へ、後ずさりをし始めていた。
『なんだよ。お前結構、妬くんだな』
ボーマンは妬くほどの相手でもなさそうな、
レオンの側にいる青年を見つめなおした。
どこにでも、転がっていそうな、まじめそうな青年。
青年と言うよりはまだ少年に近いかもしれないが、
白衣が彼を随分落ち着かせて見せていた。
が、歳はクロードよりいくつか若そうである。
と、なると大学生?若いって事は特待生?
もしくは飛び級でもう、卒業しているのかもしれない。
『なんてことないじゃねえかよ?』
ボーマンはその瞳をレオンに移し変えた。
「え?」
レオンが・・・いつものレオンと違う。
どう違うのか?って?
しいて言えば、クロードを見るときの瞳に似ている。
「え?・・て、それ?」
恋する男の敏感さが哀れになってくる。
多分当の本人が意識するより先に
クロードの方が先にレオンの感情に気が付いている。
ボーマンは外に出かけた身体を部屋の中に入れてやると
クロードのそばに近寄っていった。
『へっ。ちったあ。おれの気持ちが判るかよ?』
なんて事も思いながらボーマンは
クロードの側の椅子にどかりと座り込んだ。
「・・・・・」
黙って座っていると思いもよらずクロードの方が喋り掛けてきた。
あい変わらず二人を見たまま、クロードは
「昼休みまで・・アイツにべったりなんだ」
と、言った。
「な?」
「うん」
ボーマンの言葉がなんだって?そうなのかよ?
と続くのをクロードは先に頷いてる。
『おい?そりゃあ。危険信号どころじゃないじゃねえか?』
「あいつ・・。」
クロードが呟く言葉さえひどく憔悴してる。
「おい?まさか・・」
「なに」
前をむいたまま、なんだか何かの抜け殻みたいに
気のない返事がかえってくる。
「な・・なんだよ。そりゃあ、
つまり、お前の部屋に帰っても
レオンの奴はいっさい何もさせねえってことかよ?」
「は。じゃなけりゃ。
何で、僕がこんなやきもきした気分あじあわなきゃなんない」
そりゃあ、そうだ。
「ん。でも。お前のところには、いってるんだよな?」
「ん。でも、本心なのかな?ごまかしてるのかな?
くたびれたって、そればっかで・・ぜんぜん・・」
「はあ・・」
「レオンにかぎって、とは、おもうんだけど」
自信がもてなくなってる。
レオンがクロードのところに行かないってなっちまえば、
それはもっとたいへんなことだけど・・。
でも、あのレオンが没交渉?
「あいつのせいだと思いたくないんだけど。
でも、アイツが来てしばらくしてから・・」
ボーマンはもう一度アイツとレオンをじっと見た。
多分、さっきのクロードに似たような顔つきしてるんだろうな
とボーマンは自分を思った。
何を思ったのかクロードは急に立ち上がると
レオンの側に近寄って行った。
「クロード。だめだよ。あとにしてよ」
ちょっと、抵抗はしてみたようだけど、
クロードの思いつめた表情に気が付くと
レオンはクロードの手にひかれて
レオンの専用の小部屋にレオンを連れて行こうと
しているクロードに従ったようだった。
「よくねえな」
頭に血が昇ってる状況のクロードを今は宥めるしかない。
そんなレオンの気持ちがみえかくれしている。
だけど、ボーマンにはどうしてやる事もできず
クロードが帰ってくるのを待った。
案外、誤解かもしれない。
もう少しすればクロードのレオンであることを知らされた
レオンが妙に甘やかに潤んだ瞳になって帰ってくるかもしれない。
ボーマンはじっと待ってみるしかなかった。

こんな風に使う事は無いと思っていた、ポケットの中の小瓶の存在を
クロードはそっと確かめると、
レオンを引っ張っていった部屋の鍵を閉めると
途端にレオンをおさえこんだ。
「クロード・・・」
「ね?レオン、すこしだけ」
離れてしまったんじゃないかと思うと、
無性にそうじゃない事を確かめたい。
そして、またクロードの物でしかない事を
レオンに思い知らせておきたくもなる。
「クロード、ね、あとで・・ね?あとで・・ちゃんと」
「そういって・・ずっと僕をさけてるじゃない?」
「・・・」
黙ってしまわれると、その通りだよと言われてるようでもある。
クロードはやにわにレオンのズボンに手をかけると
下着ごと引き摺り下ろし、ポケットの中の瓶の中身を
クロード自身になすくりつけると、
レオンを後ろから押さえ込んで
むき出しになったレオンの局にいきなり挿入していった。
「や・・だめ・・だめ・・だよ」
レオンの言葉がますますクロードを意地にさせている。
「ほんとうに?いや?」
いつもより、ひどく手荒にクロードはレオンにいどんでいる。
レオンの片足をかかげあげると、
レオンの中に入り込んでるクロードの物がよくみえる。
「だれのもんだよ?」
「あ」
クロードにうごめかされ、
オマケに恥ずかしいその行為そのものの、
その部分をもろに見られるような格好をさせられてるのに、
レオンはじぶんでも、不思議なくらいあえぎはじめてる。
「や・・クロー・・あ・・あああ」
完璧にクロードのレオンである。
「きもちいい?」
「あ・・ん・・」
「ほんとに?」
クロードは動きを止めて見た。
途端にレオンがねだりだす。
「ねえ・・うごいて・・ぼ・く・つら・・い」
だろ?それがわかりゃいいんだ。
『お前と僕がひとつになる事が一番最高なんだ』
「ああ・・クロード」
動き出したクロードにレオンは陶酔しきっている。
『つまらない・・やきもち、やいて・・ごめん』
クロードの不安がクロードを何度も呼ぶレオンの声で消え去ってゆくと、
クロードもやっと自分のレオンへの独占のしるしを
レオンの中に放ちきった。
そして。
無理やり、手繰り寄せて、確認したレオンの愛に充たされたクロードは、
自分の無理強いを素直にわびた。
レオンが、ふと寂しい顔をし、
そして、なんだかひどく遠い目をした。
「あ?」
その遠い目がふと悲しい目になると
次の瞬間何かを決心するような目になった。
「御免。クロード。僕、しばらくクロードにあわない。あいたくない」
「え?」
何で?さっきあんなに何度も僕の名前を呼んだよ?
僕のレオンだってことをあんなに感受していたのに?
「ごめん・・・」
レオンは他に言える言葉を見つけれず、
事の事実に只々、驚嘆しているだけのクロードから
身体を離すと手早く服を着始めた。
「あ・・・」
レオンの中のなごりがレオンに痕酔いをおこさせていた。
レオンは身体の中に走った切なさに、あ、と小さな声を上げたけど
それを振り切るかのように服を着だすレオンの瞳に
大きな涙がうかんでいた。
『そんなに悲しいのに・・それでも、僕をふんぎりたい?』

しばらくして、研究室に戻ってきたレオンがクロードと一緒じゃない。
ボーマンは慌てて外に飛び出して行った。
研究所の玄関を走り出て、クロードがいないか辺りを見渡した。
「いた」
クロードは大きな門をゆっくりとくぐりぬけていた。
「おい!」
ボーマンがかけた声にクロードが立ち止まった。
クロードの側に駆け寄るとボーマンはクロードの様子をじっと見た。
そして、待った。
「あは・・」
と、自嘲的な笑いをうかべるだけで何も言おうとしないクロードに
ボーマンはたずねるしかない。
「そういうことなのかよ?」
つまり、レオンはあの新人助手がいいってことなのか?
「よく、わかんない。でも・・しばらくあいたくないって」
「な。なに言ってんだよ?それで、
お前、理由も聞かずのこのこ、逃げ出してきたのかよ?」
「ボーマンだったら・・・きく?」
「あ・・」
ききたくない。きけるわけがない。だけど・・。
「もう少し、僕も・・自分なりに考え直してみたいしさ」
「考え直すって?理由もわかんなくてどう、考え直すんだよ」
「なんとなく・・思い当たる事があるんだ」
「それ?どういうことだ」
「うん」
クロードは少し考えて辺りをみまわした。
「ねえ。久しぶりに飲もうか?そこで・・はなすよ」
「あ?ああ」
ボーマンはクロードと並んで歩き出した。

そして、店にはいって、かれこれ、水割りももう、三杯目。
「なあ?」
「なに?」
「おまえ。やっぱし、どうしてもレオンがいいのかよ?」
クロードはボーマンの言葉にどう答えるべきかを考えていた。
「それ、あきらめろってことをいいたいわけ?」
ややすると、ボーマンの質問の答えにならない回答を
クロードが尋ね返した。
「いや・・そうじゃないけど」
「諦めたほうが良い様にみえるってことなわけ?」
「・・・」
「ぼくは・・」
「・・」
「しかたないよ。自分の気持ちはどうにもなんないもの。
それにこんなことぐらいで・・」
「ん。なら、いいんだ」
どうにもなんない気持ち。
それもわがままなら、レオンの我侭だけをせめることはできはしない。
「僕は、レオンが僕を好きだから・・好きになってるわけじゃないしさ。それに」
「なんだよ?」
「もし、そうでも、まってるだけだよ」
それは、つまり、レオンがあの新人君に熱をあげてるってことをいう?
「そんなに、レオンがいいってことか」
「仕方ないよ。ほれた弱み・・。ボーマンもそんなことない?」
「他に・・にげをうつきにはなんねえか?」
「きばらし?できるわけないよ。そんな気になんない」
いくらでも、クロードを受け止めてくれる奴はいるだろう。
けど、こいつはそんなやつじゃない。
「そんなんだから、
レオンが安心してわがままいいだすんじゃねえのか?」
「しかたないよ。僕にはレオンしかいないもの」
「おい・・」
泣き出しちまいそうな男心をボーマンはじっと見ていた。
「たく。不器用すぎるんだ」
「うん」
ボーマンはクロードがここに来る前に言っていた
『思い当たる事』ってのをきいてみるきになっていた。
「何だよ、ところで、さっき、言ってた思い当たるって事って、
なんだよ?」
「うん。前にもあったんだ。どういうのかな。やっぱ。
レオンには、僕の欲求をうけとめきれないんだ」
「どういうことだよ?おまえら、そういう仲じゃねえか?
それをいまさら・・え?前にも?」
「うん。おもちゃにされてるって・・」
「そ、そりゃあ・・」
ボーマンは黙った。
こいつらがどんなセックスをしてるか?
その答えみたいなものでもある。
「だから、きっと、あの新人といると、
その辺りを余計に考えさせられるんだと思う」
「わかんねえな」
「うん。レオンが大人になってきてるんだよ」
「大人?」
「そう、社会的にね」
「あーん?」
ボーマンは黙り込んでしまったクロードにそれ以上問い直すのは止めた。
それから、いいほどのみまくって、
クロードは馬鹿みたいに何杯もおかわりして、
帰る頃にはすっかり、よっぱらっていた。
「あは・・きもちよさそう」
帰り道の公園。クロードは公園の中にある噴水に近寄っていった。
何をするのかと見ているボーマンの前で
クロードは噴水の池の中に足を入れると、
噴き出している噴水の真ん中に近寄っていった。
『ば・・ばかやろう』
もう、涼しい風がふきだしている。
『馬鹿が、やけになってるじゃねえかよ。
つよがりばかり、いいやがって・・』
ボーマンはクロ―ドを引っ張り出しに自分も噴水の中に入っていった。
「ボーマンまで・・ぬれちゃうよ」
「ばかいってねえで」
クロードを掴んだ腕をボーマンは引き寄せた。
途端に、クロードがしがみついてきた。
「おい?」
「僕はレオンを失いたくない」
ボーマンの肩にすがったクロードの声がないている。
「なんともねえさ」
「・・・・」
どぼどぼのふたり。
クロードを連れて帰り、ボーマンも家に帰った。
「あら?ふられたの?」
帰ってきたびしょぬれのボーマンを見たニーネがたずねた。
いつ振り出したのか知らないけど雨にである。
でも、ボーマンにはちがってきこえてしまう。
「ふられた?」
わけはない。
クロードに限ってそんなことあってたまるか。
ボーマンはぐっと歯噛みをする。
『レオン。お前どういうつもりでいるんだ?』

次の日。
もちろんボーマンはレオンのところに出かけて行った。
レオンは相変わらず新人君と、一緒に組んでいる。
実験上の注意を与えるのさえも楽しげにみえる。
『てめー?浮気か?クロードに厭きた?んなこといわせやしねえぞ』
「おい」
レオンに向かってボーマンは手をふりこっちに来いと合図した。
「あれ?ボーマン随分、はやいじゃない?」
寄って来たレオンは普段のレオンとちっともかわりはない。
そう、新人君の側を離れるとき、
やけに優しく「ちょっと、まっててね」と、声をかけた以外は。
「おい」
「なに?」
「お前・・クロードのこと・・」
クロードのことを切り出そうとしたボーマンが
「クロード」といっただけで、レオンの表情が強ばった。
「やめてよ」
やめてよも何もまだ俺はなにも。
「な?何もいってねえじゃねえかよ?」
「クロードのことでしょ?あのね」
レオンは思い切るようにボーマンをまっすぐ見つめると
「少し、うんざりしてるんだ」
と、言い放った。
「え?」
「・・・・」
「なんで?」
「だって、きのうだって」
クロードが銀色の小瓶を使っただろう事は
ボーマンにもさっしはついている。
それが気に入らなかった?
お前に限って喜ぶ事はあってもそれはないだろ?
「なんだよ?いってみろよ」
「うん」
言いにくそうにレオンは口ごもった。
「なんだよ?」
促されてレオンは唐突に言葉を発した。
「だって・・・セックスばっか」
「え?」
クロードのいっていたとおりなのかもしれない。
「ん、でも・・おまえ?」
ふううとレオンはため息を混ぜ込んだ息をはいた。
「僕はその解消役だけなのかっておもってさ」
「ば・・ばか。んなわけねえだろ?」
だいたい。それだったら、クロードだって他に逃げをうつ。
なのに、打たないって、それはつまり、レオンじゃなきゃ駄目だって、その気持ちがセックスになっちまう。
それが判んないお前じゃないだろうに?
「そう・・かな?」
いけねえ。完璧に注意信号だ。
それ相応にお互いの心が燃え上がっていてこそ、
対等なセックスが成り立つ。
なのに、今のレオンのハートは不完全燃焼してる。
それなのに。
そのレオンにセックスを求めるって事は
お互いの食い違いに溝をふかめるだけになる。
「クロードのどこがきにいらねえんだよ?」
ようは、不足がある。つまり、そういうことである。
「しつこい・・おまけに無理やり・・・」
「え?」
それがよくてたまんなかったおまえじゃねえのかよ?
一体どういう心境の変化だ?
ボーマンはむこうで顕微鏡を覗き込んでは、
レポートに何か書き込んでる新人君を見つめた。
レオンの注意に新人君は素直にひたむきなほど従ってきている。
それに比べりゃ、クロードは
何もかもをセックスで牛耳ろうとしてるようにみえるかもしれない。
***アイツにひかれてるせいというわけじゃねえな?***
だけど、あいつのせいで、
クロードがつまらなく見えてきているのは、間違いないようである。
「あきあきしてるのかも・・しんない」
はっきり断定はせず、まるで人事みたいにレオンは
自分の気持ちをいった。
「ふーん」
ボーマンはうなづいておいた。
いつの間にかクロードからの愛情が
当たり前になりすぎてしまっているだけだとボーマンは思った。
安定しきって、存在感が重くのしかかってしまってる。
「ふーん。ぜいたくいってると、クロードをなくすぜ」
「え・・あ、ん」
「自信、たっぷりだろ?どこにも、いくわけないってな?」
だからこそ、なお、その存在が重圧になるんだろうけど。
ボーマンは、レオンの状態が見えてきたら
クロードの事が心配になってきていた。
「アイツ。昨日の事で、かぜひいてねこんでるかもしれねえぞ」
レオンに、ポツリと漏らすと、ボーマンは外に出て行った。

昨日のお酒と馬鹿な水遊びがたったって、
クロードはまだ、ベッドの中にいる。
クロードは枕もとの時計をみた。
もう、お昼過ぎてる。
いつもならレオンと一緒に昼食をとって、
それからレオンの部屋に行って、そして・・・・。
『いつも、いつも、あんなことばっかしてるわけじゃない。なのに・・』
レオンに腕枕を貸してゆっくりベッドに転がって、
取り留めない会話をかわす。
レオンがそばにいるだけでいい。
話しかけると、時折瞳をふせる。
頼りなげでとっても、寂しがりやのレオンだって事はよくわかってる。
だから、なおさら傍にいたくて。
そして、傍にいれば、愛しさがつのる。
つよく、確かな愛で、
レオンのはかなげで心もとない寂しさをぬぐいさってしまいたくなる。
だけど、それは、クロードが寂しいレオンを
見たくないせいかもしれない。
「ごまかしてるだけ?」
それでもよかった。
今までのレオンならそれでも、
クロードの愛に充たされていてくれていた。
「だけど・・行けないよね」
あんなにレオンがはっきりと言ったんだもの。
――しばらく・・会いたくない。――
「しばらくって、いつまでなんだろ?」
ぼんやり考えながらクロードはベッドから起き上がろうとした。
「あ・・っつうう」
随分、頭がいたいじゃないか?
『ひさしぶりに、のんだせいだ』
いやいや。そんなことより、量の問題だっておもうんだけどね。
「ま。いいか。たまには、おとなしくしてようか」
クロードはもう一度ベッドにもぐりこんではみたけど、
一度目覚めたら、暗澹とした気持ちが一層クロードをおそってくる。
「はあ」
小さなためいき。
考えまいとするのに、レオンの笑顔が浮かぶ。
そのレオンの笑顔を今頃アイツが独占してる。
「くそ」
ちょっと、動くと頭の芯がずきずきする。
そのくせ、
「ああ。はらへってる」
レオンがアマンダにでかけてるかもしれない。
クロードはどうしようか、迷った。
「やめとこ」
きっと、逢ったらいい顔されない。
もう少し時間をずらしてゆく事に決めると
クロードは布団をひきずりあげた。
だけど・・腹へった・・・。
そのとき、玄関でかちゃりと音がした。
「ん?ダレ?・・・ボーマン?」
レオンのわけがない。
他に来そうなのは、昨日の今日だから、ボーマンくらいだろう。
『あいてるよな。ボーマンが閉めていってくれるわけがない』
でも。
かちゃかちゃって、鍵をさしこんでる。
あ・・。
レオンしかいない。
クロードは慌ててドアの傍に駆け寄っていった。
むろん、歩くたび頭はずきずきする。
「つーーーーー」
うなりながら、こめかみを指でおさえこんだクロードが
ドアを開けようとしたとき向こう側にドアが開かれた。
「ああ。やっぱり」
ドアの外にはクロードの顔が辛そうにゆがんでいるのを見たレオンの声。
「ああ、レオン?」
「ボーマンからきいたよ。風邪は大丈夫?二日酔だけ?」
「あ、ん。きてくれたんだ」
「そ。どうせ。お昼もたべてないんでしょ?」
「うん。そのとおりだけど。でも、あの・・」
「昨日の事?撤回はしないよ。でも、それとこれはべつだよ。
それに、もう少しちゃんとはなしときたいなっておもったし」
「あ。うん。な、なにかな?」
「ああ。いいよ。そんなことはあとにして、とにかくたべよう。
僕もおなかぺこぺこ」
アマンダで作ってもらったお昼の包みを引っ張り出すと
レオンはテーブルに広げた。
クロードのおなかはすいてる。
でも、胸の中に渦巻いてる思いを吐き出してしまわなきゃ
ちょっとたべれそうにない。
「あの・・」
「うん?」
「あの、僕の事、嫌いになったわけじゃあないんだよね?」
「う・・ん」
なんだかはっきりしない返事だけど、
嫌いだったら、レオンがここにきてくれるわけはない。
「あの・・さ」
「うん?」
言いかけた言葉が、つづかないレオンである。
「あの?何?教えてくれなきゃ、あの、僕も気をつけられないよ」
「うん。あのさ。嫌いってわけじゃないんだ。でも、ちょっとね」
「だから・・なに?」
「ん。あのね、ちょっと。あんなことっばかし・・で」
やっぱり・・そういうことではあるらしい。
おもちゃみたいだって?」
いつかの喧嘩の時にレオンはそういった。
「ううん。そうじゃない。そうじゃないのはよく判ってるんだ」
「じゃあ?どういうこと?」
「あの、怒んないできいてくれる?」
「う、うん」
怒んなきゃなんないこと?それって?。
不安にクロードの胸がきゅううとしめあげられてくる。
「僕ね・・あの子と」
クロードにはそれが誰の事かすぐに判る。
でも、判っているのなんか見せたくはないクロードなのである。
「あのこって?あ、ああ。あの新人君のこと?」
平気そうな顔をしているけどクロードの胸の中では、
どくんどくんと心臓の音がひどく大きくなっている。
「ん」
「な、なんかあったわけ?」
クロードの舌が軽くもつれている。
いやだ。こんなこと聞きたくもない。答えて欲しくもない。
「そうじゃなくてさ。なんていうのかなあ。
あの子。こう・・ぼくのことをね。一生懸命みてくれるんだよね」
それって・・つまり、どういうこと?
のどまで出かける言葉をクロードは押える。
それって、あいつに想われてるって事?
レオンはそれが嬉しいって事?
きこうとしても、喉がひりつくように痛くて
クロードは言葉に出せなかった。
「もちろん。あの子が見てる僕って
研究とか、仕事にたいしてのことなんだけど」
「だけど?」
「だから、よけいにクロードが見てる僕ってさ。
セックスばっか・・・そんな気がしてしまうんだ」
「ん」
なんだかレオンの考えてる事が見えてきたクロードであった。
「あのこにはそんなもんがなくてさ。なんていうか。
博士としての僕のあり方を問われるような厳しさがあって、
気分がすごく張り詰めて気持ちが充実してくるんだ。」
レオンの言いたい事はよく、判った。
「つまり、僕にはそれがないってことだね。
僕とは根本的なスタンスを問い直される事はない?
精神的な面でレオンを満足させられないってことだよね?」
「そういうことになる・・よね」
「僕がなにもかも、許しすぎちゃってるんだよな」
「そう。でも、それは仕方ないって思うんだ。
セックスしちゃったらなにもかも、許容の範囲にはいってしまうんだ。僕も多分そう。
クロードが人間としてどうかってことなんかより、
僕を求められたいってそっちの方が先で
少々のことなんか、どうでもよくなってしまうんだ」
「社会的じゃないってことだよね」
クロードの言葉にレオンは
「つまり、そうだね」
って、うなづいた。
「僕も考えなかったわけじゃあないんだ。
でも、それでも、僕はレオンがいい。
僕がだした結論はそれしかなかったんだ」
クロードの言葉にレオンは随分しんみりした調子で
「クロード。君は随分大人なんだ」
と、答えた。
クロードはレオンをじっと覗き込むと
「レオンがきめりゃいい。
僕の事は逃げ場所に過ぎないかもしれないけど、
それでも必要かもしれない。
でも、そうじゃなくてレオンに
もっと、違う価値が必要になってきてるのかもしれない。
でも、いずれにしろ、レオンがきめることでしかない」
レオンはクロードを見つめ返した。
「クロード?
それって、もしも、僕が別れるって言ったらそうするってこと?」
レオンが、はっきりと口に出した
決別がありえるかもしれないって事にクロードは頷いた。
「お前の人生を押しつぶすようなマネだけはしたくないんだ。
お互いが心の中で触れ合える物がなくて
身体だけ重ね合わせてるなんて寂しい事だよ」
レオンの主体性が一番大事であるとクロードはいう。
『クロード。そんなに僕が一番?僕が一番だいじ?』
「ゆっくり考えりゃいいよ。優しさだけじゃ生きてゆけないんだ。
レオンがレオンらしく活きてゆけばいい。
でも、それでも僕はレオンを愛してる。
この気持ちだけはどうしようもないんだ」
「クロード」
涙が出てきそうなレオンの頭をくいって、つつくと
クロードはレオンの髪をなで上げた。
クロードはそのまま目線を時計に移し変えた。そして
「レオン。時間だよ。もう、研究所にかえらなきゃ・・」
と、レオンに時間の猶予がないことを伝えた。
「クロード。今日は・・こない?」
「うん。しばらく、いかない」
「ん」
それはレオンがクロードに宣告したせいに違いないけど。
「きにすんなよ。自分を一番大切に考えりゃいいんだ。
一番自分を愛してやれる生き方を選べばいいんだ」
「クロードにはそれが・・・僕?」
「そうだよ。でも、レオンが僕を自然に望んでくれるのがいい。
無理はつづかないよ」
「クロード・・・・ぼく」
「いいから、はやく、もう・・おいきよ」
なんで、クロードのこんな気持ちにこたえられないんだろ?
レオンは自分がひどく悲しくなってくるのを感じながら
研究所に戻って行った。
そこにはボーマンが所在無さ気に待っていた。
帰ってきたレオンの顔がいまいちすっきりしてない。
ボーマンはやっぱり、クロードの事がきになってしまう。
あいかわらず、新人君の前に来るとレオンの顔が
晴れやかになるのを見ると一層ボーマンはクロードが気になる。
『どうなっちまってるんだよ?』
こんな疑問は直接、クロードに聞いて見るしかなさそうで、
ボーマンは腰を浮かせ、態上がるとそそくさと外に出た。
ひどく追いすがるようなレオンの瞳を感じながら
『あーん?駄目になっちまったのかよ?で、そんな目かよ?』
と、思ってしまう。
「まあ・・いい」
クロードにもう少しきいてみてからにしよう。
ボーマンはレオンに問い詰めるのを後にして
クロードの所に向かっていった。

ドアを叩くとクロードはやっぱりいた。
「はいるぜ」
なんて、いってるけど、もうしっかり鍵をかけてないことを確かめ
ドアを開けて、ボーマンは部屋の中にはいっている。
「おい?どうなっちまったんだよ?」
レオンがクロードのところに来たのはわかっている。
なのに、なんで、ああもすっきりしてない顔をしている?
ボーマンのいきなりの言葉が
レオンとの事だって事はクロードだって判ってる。
「大人になってきてるんだよ」
よく判らない説明。なんだよ、それ?
「どういうことだよ?」
「いろんなことを潜り抜けて、相手をえらびとってゆくよね?」
レオンのことである。
ボーマンはクロードの言葉の言う事の意味合いに慎重に頷いた。
「レオンは・・子供のまま、僕をえらんだ」
「・・・」
「今、子供の殻をぬぎすてはじめているんだよ」
「クロード・・おまえ」
ボーマンの詰まった言葉にクロードは頷いた。
「そう。次のレオンがもう一度、僕を選んでくれたら、
今度こそ本物だよね?」
そこまで、レオンを許容している?
ボーマンはクロードの深さに黙り込むしかなかった。
だけど。
「お前?それでいいのかよ?
あいつを成長させていったのはお前じゃないか?
我侭で人のことなんか気にしねえ奴が随分、おとなびて・・・」
「まだ、まだ、子供だよ」
「ばかいってろよ?そんな子供にお前は、ほんきなんだろうが?」
「だから・・・まっていられる」
ボーマンはクロードの顔をまじまじと見つめた。
『お前・・・ほんとに』
レオンのスタンスが変化し始めている。
愛に餓えていたレオンがクロードにより心を充たされてゆくと
次は普通の大人らしく社会意識に目覚めてゆく。
まだ、十二才だけどそんな変化をきたすのは不思議な事ではない。
「あいつ」
ボーマンはその続きを口に出せなかった。
けれど、クロードはあっさりと
「あの、新人助手がレオンをうけとめられるんなら、
それはそれでいいんだ。それをレオンに気が付かせたも彼だし。
その事の結果なんだもの」
「ば、ばか。ばかいうな。お前くらいマジにレオンを思ってる奴がいて
いきゃあしねえよ」
「ん」
だといいんだけどね。
って、言葉をクロードは飲み込んだ。
レオンのことはクロードが一番、判ってる。
新しい自分を見せてくれる相手に惹かれないわけはない。
クロードには見えている事だった。


その夕方レオンは新人君。
ああ、名前をだそう。ジャステイスっていうんだけどね。
そのジャステイスの胸にいだかれてしまっていたんだ。
「あ・・・・」
レオンの戸惑いもさることながらジャステイスも
いくばくか戸惑っている。
震える指先。
ジャステイスの胸の鼓動がレオンにまで伝わって来る。
「僕を・・好き?」
レオンはジャステイスに尋ねた。
「はい。でも、ごめんなさい」
「なにが?」
何がごめんなさいなんだろう?
「こんな気持ちになっちゃうなんて・・僕」
間違ってる事ではない。
レオンはジャステイスの胸に頬を当てた。
博士である。
上司でもある。
そして、レオンには恋人がいる。
こんな気持ちになることは許される事ではない。
でも。もう、押え切れない。
そんなジャステイスの気持ちが痛いほどに判るレオンなのである。
「僕も・・」
嬉しいと言おうとしたレオンの中に鋭い痛みが走る。
(クロード)
その存在とジャステイスが重なる。
途端に不思議な違和感がレオンを包んだ。
『のめりこめない』
ときめかない。
こんなに身体を密着させているのに。
嫌じゃない。
それなりに嬉しくもあり、ジャステイスの事はいとおしくも思える。
なのに・・・何かが違う。
レオンは感じ取ったことをジャステイスに告げるしかなかった。
「最初で最後だよ。けじめはつけよう。
僕は君の上司だ。仕事に私情をもちこむのはよくない」
自分の言ってることは大いに矛盾がある。
仕事中だってクロードのことがたまらなくいとしくて。
プライベートルームでクロードとの時間を作ったことなんか
何度だってある。
私事をわきまえられないくらいクロードがいとしくて・・・。
「ごめん」
レオンはジャステイスにわびると、その胸の中から抜け出していった。
―恋じゃない―
レオンにはそれだけがはっきりと判った。
「あの人がいるから?」
ジャステイスはレオンに尋ねていた。
「え?」
「よく来てる人。
今日、みかけなかったのは、別れたせいじゃなかったんだね?」
「あ・・」
―別れたりしやしない。別れたり、しやしない―
レオンの沈黙がジャステイスを悟らせている。
僕の事は?
ジャステイスがそれを突き詰めればレオンはどうこたえるだろう?
気紛れ。迷い。浮気。魔がさした。
どんな言葉を言われても仕方がないことである。
でも。要は彼からレオンを奪えなかった。
それだけでしかない。
「判りました。レオン博士・・・」
レオンを仕事上の呼び名に戻す。
公私にけじめをつけたジャステイスが、
自分が助手でしかないことをレオンに表明していた。
「ご・・御免。僕があいまいだったから・・」
「いえ。レオン博士も普通の人なんだってむしろ、安心しました」
「・・・・」
優しい思いやり。
レオンをせめもせず。
「初めから・・無理だってわかってました」
この恋に勝算がない。
ジャステイスにはそれがわかってながら、
レオンを抱き寄せずにはおけなかった。
「あの人には・・僕の気持ちがわかってたはずです」
ジャステイスはひどく辛そうな顔をした。
レオンにふられたことより
あるいはクロードに勝てないと言うことが
この青年を一層痛めつけていたのかもしれない。
「なのに。レオン博士を黙って見てた。
僕とはレベルが違う。あの人が見てる博士は、僕が見てる博士じゃない。もっと大きくて、広くて。僕はかてるわけがない」
そんなクロードから、レオンはのがれようとした。
『僕がとてつもなく・・・おろかだっただけだ』
「あの人。まってますよ」
そう。彼じゃなけりゃこんな愚か者を許せやしない。
レオンが気が付き、レオンがとり戻した価値に
ジャステイスは頷いて見せた。
幸せにと語りかけるジャステイスの瞳に答えることがなんであるか?
ジャステイスにレオンは研究所の鍵を渡した。
「行ってらっしゃい。ちゃんと戸締りはしておきます」
ジャステイスは小さく手を振って見せた。
恋しい人が一番幸せであること。
その想いがジャステイスにはある。
そして、その思いが一番深いのはクロードだろう。
『僕は馬鹿だ。クロードはいつだって
僕を満たしてやりたいってそれだけでしかないんだ。
セックスばっか?ちがう。僕が望んだんだ。だから』
そう。いまだって。ひどくクロードが恋しい。
肌を重ね、確かなクロードを感じ取りたい。


クロードの部屋の前にレオンは立ちつくす。
やがて、レオンはドアを大きく開いた。
「ん?はいってこないの?」
レオンに気が付いたクロードが傍に寄ってきた。
「はいっていい?」
「なにいってんだよ。はいってくりゃあ・・・」
「クロードの心の中に・・・」
「あ、ばか。なにいってんだよ。
初めから、おまえはでていってないよ」
「はいっていい?」
レオンはもう一度同じ言葉を繰り返した。
「レオン?」
「僕が必要ならひっぱりいれてよ。
レオンの好きにしろとか、そんなこといわないでよ」
「あ・・・。ご、ごめん」
ドアを閉めないままクロードはレオンを引き寄せた。
そして、レオンをしっかり抱きしめた。
「クロード」
「ん?」
「僕の胸のここんとこ・・・変なんだ」
「え?」
「クロードじゃないと、心臓がとくとくってうごかないんだ」
「ばか」
「だって・・・」
「他の人で試してみたって、言ってることになるよ。レオン・・」
「いいよ。僕も良くわかったもの」
「ねえ?レオン。それ、懺悔?・・・それとも・・アプローチ?」
「アプローチ?なに?それ?どういうこと?」
「どうにも妬けちゃうと・・ほしくなっちゃうでしょ?」
「いいよ。クロード。僕も・・・のぞむところだもの」
「レオン」
「ん」
『口説くの、うまくなっちゃって』
って、クロードの手がやっと、ドアに伸びた。
これから先の二人の事はうっかり人に見られたくない。
それに。一刻も早く、
しっかり、レオンを
閉じこめてしまいたいクロードだったんだ。

                                 おわり
posted by 憂生 at 17:24| Comment(0) | 再掲載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

セクシュアル・モーメント 2

「で?」
レオンがプリシスに掴まってる。
なんの用事?と言う前にレオンの顔を見てやって欲しい。
困ってしまってるレオンの顔は、
なんで、僕にそんなこと聞かなきゃなんないのっていってる。
レオンの困ってるのなんてお構いなしに
さらにプリシスは訊ねてる。
「ねえ。レオンなら知ってるでしょ?そうに決ってるじゃない」
「僕・・・」
「ね。教えて」
そんなこといったって・・・。
レオンが困るのも無理はない。
プリシスったらレオンに上手なHの仕方っていうのを
ご教授願ってるんだ。
「だから、ひとそれぞれで・・・。
プリシスはプリシスのやりかたでいいじゃない」
「でしょ?それぞれだから・・
だから、レオンの場合を教えてっていってるんじゃない。
なにも、レナがどうかってのをレオンにきいてるわけじゃないのよ。
レオンのことを聞いてるのになんで、こたえられないわけ?」
何か、すごい理屈だなって思いながら、
どうやれば、プリシスの質問から逃げれるかをレオンは考えている。
「で・・どうなのよ」
どうにも、話がそれない。
「・・・」
黙り込んだレオンにプリシスはいう。
「けちね」
そ、そんな言葉あり?
なんだっていうんだよ?
レベルの低い喧嘩になりかけてる。
だけど。アシュトンのためにすっかり変わっていこう
としてるプリシスの気持ちはよく判る。
レオンは一つだけ、教えてあげる事にした。
「そ・・そうなの?」
どうやって口でするかって事じゃなくて
余ってる手をどう駆使するかって事をレオンは教えた。
「そうやって・・おいて・・指を」
「ひ?」
ちょっと待って、レオン。
それは自分がそうされたいって事じゃなくて?
レオンがクロードのその場所に指をいれちゃうの?
え?それで、クロードはうれしいわけ?
それって、クロードにも受けの資質があるってこと?
湧いてくる疑問を、プリシスが確かめようとしてる。
プリシスの中の精神構造の規律がぐにゃりと
曲がってゆく感覚を味わいながら、考えてしまう。
求めちゃう極限って相手をそこまで変化させちゃうもんなのだろうか?
「レオン。あの、それ、レオンのほうじゃなくてクロードに、なわけ?」
プリシスがもう一度確かめた言葉にレオンは短く
「馬鹿」
と、答えた。
『え?』
どっちなわけ?
でも、そんなことが判らないのかって言ってるレオンの一言に
プリシスの妙なプライドが逆撫でされて、
もう一度はっきりと聞くことに歯止めがかかってしまった。
『いずれにせよ。レオンは知らないことだけど、
アシュトンは受けでも、あるんだよね。だったら・・どっちにしろ』
そんな風にしてあげればアシュトンは喜ぶんだろうな。
でも、それって、アシュトンに
ボーマンとの事を思い出させてしまうだけじゃないんだろうか?
それこそ、其の部分の性質。
つまり受けへの欲求をアシュトンに
自覚させるだけになりゃあしないだろうか?
『とうのアシュトンはその部分への刺激がほしいんだろうか?』
問題の定義の基本はそこにある。
『もし・・そうなら・・してあげられるかな?』
場所が場所でもある。
そんなとこに指いれちゃう?
と、いったって、ボーマンに
もっと、すごい物を入れられちゃったわけであるアシュトンなのだし・・。
自分への不安と、
アシュトンへの不安と疑問をだかえこんでプリシスは黙り込んだ。
これ以上、そばにいたら何いわされるかわかりゃしない。
って、なもんで、とっくにレオンはプリシスの傍を逃げ出して、
さも深刻そうに顕微鏡を覗き込んで、
プリシスの質問をシャットアウトしている。
プリシスは傍らの椅子に無意識のうちに座ると
じっと何かを考え込んでいるようだった。

「おりよ?」
研究室のドアを開けたボーマンの目にプリシスの姿が飛び込んできた。
俺とはまだ、ツラあわせたくねえだろうな。
だから、よほどの用事じゃなけりゃ
ここにはこないだろうって思ってたプリシスがいる。
『何だよ?一人だよな?アシュトンとまた、喧嘩かよ?』
傍にアシュトンはいない。
何かあったんだろうか?
ボーマンの目はプリシスの表情を探り始めていた。
でも、ボーマンはほっと胸を撫でおろした。
『大丈夫だ。上手く、いってる』
ばら色に染まった頬。
明るい光のある瞳。
充たされてることに満足してる。
『ちえっ。だったら・・なんだよ』
自分にはもう相談なんかしてくれなくなったプリシスを
まじまじと見つめたボーマンだった。
『え?』
まじまじ見ているボーマンはきがついたこと息をのんだ。
『な、なんだよ?』
ボーマンをひどく驚かせるようななまめかしい女になってやがる。
『ほおーー』
どうやら、本当にアシュトンの子猫になりきっちまったようである。
ついつい、ボーマンは二人のその場面を想像しちまった。
足を広げろって言えばプリシスはそうするんだろ。
そして、あんなに拘ってたオーラルさえも、
百八十度変化しちまってアシュトンの物を
いとしげにほうばっちまうプリシスが見えてくる。
『へ?がきだ。がきだって思ってたら・・いつのまに。
え?アシュトン、おめえ・・やってくれるじゃねえかよ』
ボーマンの瞳はプリシスの首筋辺りを舐めるようになぞりみてしまう。
つーーっとなめるだけで声を上げてくずれおちてしまいそう。
『ふ―ん』
なんだかすっかりアシュトンに飼いならされ、
従順な女をさしだし、アシュトンに服従しきったプリシスなのである。
そのプリシスが
『え?やけにかわいいじゃねえかよ』
まだ、じっとプリシスを見つめてるボーマンはふと我に返った。
ばか、のぼせてんじゃねえぜ。
あれはアシュトンのものじゃねえかよ。
『ちくしょう。いとしくさせちめえやがって・・・』
プリシスにちっとばっかし、文句を呟くと
ボーマンは本来の目的を遂行する事にした。
「おい。レオン」
顕微鏡を覗き込んだままのレオンに声をかける。
「ん?」
レオンものぞきこんだままだけど、
声をかけた主がボーマンであることはわかってる。
「ここにおいとくからな」
ボーマンはレオンに頼まれた製剤をドアの横に置いた。
それで用事はおわり。
「ん。サンキュ」
レオンもそれだけ。
だったけど、
それで、ぼーとしてたプリシスがボーマンに気が付いたんだ。
ドアを閉めかけてそそくさとボーマンは立ち去ろうとしている。
それなりにプリシスに申し訳なく思ってるボーマンが見えてくる。
「あ、ボーマンまって・・」
この間のアシュトンとの話で、
プリシスの中にはむしろボーマンに対する感謝が生じてきている。
欲しいじゃなくて、あげる。
こんな感情がどんなに心を充たしてくれるか。
それを悟らせてくれたのはボーマンなんだ。
「ん?・・なんだ」
よもや、声をかけてくるとは思ってもみなかったプリシスが
ボーマンを引き止めた。
何を言われるんだろう?
ボーマンは出来るだけ平静を装って、いつもらしく返事をした。
即座にボーマンは自分をみるプリシスを観察している。
なんだか、よく判らないけど、プリシスの表情は髄分、なごんでいる。
『は。んな、余裕ができるくらいに
しっかり・・アシュトンはおまえのもんかよ』
軽い嫉妬があることはある。
でも、ボーマンは心底二人が深く結ばれた事を喜んでいた。
「あのね。ちょっと、相談があるんだ」
「あ。いいぜ」
ボーマンたら嬉しくてしかたない。
プリシスにとって論外、枠外ってなっちまった自分の筈なのに
もう一度頼ってくれる?
それって、つまり、
ボーマンと、アシュトンのことごと許されたってことであり、
プリシスにはそんなことをあっさりと乗り越えちゃうくらい
アシュトンと愛の深めあいが出来たってことの
間違いない結果なのである。
「おし・・アマンダにでも・・ゆくか?」


何がどうプリシスを氷解させたのかしらないけど、
ボーマンの事をもう一度信じてくれるプリシスになってる。
ボーマンはプリシスとならんで、
研究所を出るとプリシスの肩を抱き寄せて、歩き出した。
「え・・」
ボーマンのいつもながらのスキンシップに
たじろいだのはプリシスのほうである。
きっと、いつものボーマンでしかないのに、
それを受け止める自分が変わってしまってる。
いいほど大人で、
いつもプリシスのことをがきんちょ扱いにしかしてないボーマンなのに、プリシスはボーマンの中に男を感じ取れる女になってしまってる。
「何だよ?は?・・・馬鹿。俺が変な気になっちまうじゃねえかよ」
ボーマンもプリシスの変化と、
ボーマンにたじろいだプリシスの女に気が付いているんだ。
と、なれば、尚の事ボーマンにまわされた腕を
ひどく意識させられて、プリシスは一層、頬を染めてしまっていた。
『え?なんだよ・・・か、かわいいじゃねえかよ』
何とかしてしまいたくなる気が頭をもたげてくるのを
やけにはっきりと、意識させられちまうボーマンなのである。

「あのね・・」
って、プリシス。
でも、やっぱ。どこか子供っぽい。
ミルクセーキをすすり上げながらプリシスは、はなし始めた。
「あん?」
小さな肩と、細い項。
小作りで華奢な体がやけになまめかし